Driving
「ずっと待ってたんですよ」
そう言うとユキは少しむくれたような顔をした。悪い、悪いと心の中で思いながら、俺はどうすればいいのか迷っている。素直に謝るべきか。何かいい訳をするべきか。けれど結局、自分は自分なのだと言い聞かせて謝る。
「ごめん。どうもルーズなんだ」
ユキは仕方がないという顔をする。彼女は何の期待もしていないようなシンプルな格好をしている。いつもそうだ。彼女は飾らない。
彼女は車の助手席に乗ると、「どこかすいている道に連れていってください」と言う。わかったと俺は言う。
俺は暇だったから、彼女の言われるままにここにいて、彼女をどこか車の練習ができる場所へ連れていく。行き先を心の中で決めてしまえば、細かく何かに注意を払うということはない。車は移動の手段であり、音楽を心地良く聴くためのものであり、孤独を紛らわす場所だ。けれど彼女が隣に座っていると、手が汗ばむ。つい、いつもより煙草を吸ってしまう。
「もし、自分の車が手に入ったら、どんな音楽をかける?」
沈黙を破る言葉を、俺は手にしている。女性が側にいて、何か話をはじめる時には、いつも緊張をしていて、何から話せばわからないということが多かった。けれど、それは何でもいい。
彼女は言う。「音楽は聴きたいけれど、今は運転することに夢中で音が何も聴こえてこないんです。だから先輩みたいに音楽を楽しみながら運転するなんて、当分、先になりそうです」
「いいもんだよ。車の中で音楽を聴くというのは。家でひとりで聴いている時とは違う、音の深い響きを聴きとることができる。ずいぶん昔に戻ったようになれる」
「それは羨ましいですけれど」とユキは言う。ちょうど信号が赤に変わり、横断歩道を自転車が通る。交差点はがらんとしていて、その自転車が横切っただけだ。太陽はビルとビルの狭間から夏の熱気を地上に届けていて、エアコンがなければ車の中で焼け死んでしまうだろう。
音楽がシャッフルされる。お気に入りの曲がかかる。すべてOKなんだ。そう英語で歌っている。シンプルに伝わる。すべてがOK。そんなことなんて実際にはないけれど、何でもいいという気持ちになる。
高速の入り口で、通行料金を払う。そしてスピードをあげる。けれど昔のようにスピードを出すというわけにはいかない。
「先輩の運転って、結構荒いんですけど、なぜか安心感がありますよね」
年をとったからさと言いたくなる。けれど、そういうふうには言えない。「車の運転にも、人柄って出るからね」。そう返事をする。
ユキとは大学で知り合って、それから長い付き合いになる。そんなに頻繁に連絡を取り合うということはない。けれど俺が何か落ち込んだり、ひとりの孤独の中に埋没してしまいそうな時に、なぜか連絡をしてきてくれる。不思議な子だ。教育学部の後輩で、少し話すだけという間だった仲は、大学を卒業した後から、少しずつ変貌している。俺も彼女も少しずつ大人になっている。
湾岸道路は、混雑をするということもなく、いくらでもスピードを出すことができる。大学の頃は、父親のスポーツカーを借りて、ずいぶんスピードを出した。けれど、自分で買った軽自動車でそういう無茶はできない。エンジンの性能は、その見合ったスピードを、俺に教えてくれる。きちんとエンジンの回転数の頃合いというものが、今ではわかっている。
教職を辞めてから、半年ほどが過ぎていた。多くの人たちは、せっかくの仕事を辞めるなんてと猛反対した。けれど、思いきって仕事を辞めた。教えるという仕事は、ずっと天職だと思っていた。世の中の理をわかりやすく説明する。言葉を使って、少しずつ子どもたちが表現することができる領域を広げていく。中学校で働くことは難しいけれど、小学校なら。そう思って先生と呼ばれる仕事に就いた。この世の中で、自分は希望を掴むことができたと思っていた。
「教習所の先生たちは、結構、いい人たちだったんです。なかにはちょっと雰囲気があって、この人いいなって思える人もいたんですけれど、やっぱり学校で教わっただけじゃ、とても道を走ることが怖くて」
彼女から電話がかかってきたのは、仕事を辞めて、何をすることもないという生活を続けていた時だった。そういう時に、彼女は必ずメールや電話をかけてきてくれる。俺は何のサインも出していない。でも、そういうことがわかる人が世の中にはいる。
ユキは話を続ける。「すごく丁寧に車の運転について教えてくれる人がいたんです。情熱的って言ってもいいぐらい。だから、そういう人とは、メールアドレスぐらい交換してもいいかな、って思うこともあったんですけれど、やっぱり怖くてやめておきました」
「そういう人に会ったら、やっぱりユキちゃんもメールアドレスぐらい交換しちゃうの?」と俺は言う。
「別に、そんなに人にメールアドレスを教えたりはしないですよ。やっぱり。誰かからメールが来るなんて、嬉しい時もありますけれど、少し面倒だって時もありますから」
「そうだね」と言って、俺は笑う。
「けれど、メールをもらって嬉しかったよ。ユキちゃんって、なんか俺が煮詰まっているって言う時に、よくメールをくれたりするんだ。だから、今日の車の運転の練習の誘いなんて、ぜんぜん迷惑なんかじゃないよ。むしろ何もすることがなかったから、ありがたいくらいだ」
そう言うと、俺は左にウインカーを出し、車線を変更する。思っていることを言うと、空がとても綺麗にみえる。工場地帯が右側にみえる。とても大きな工場地帯だ。その向こうに海がある。景色はいつも綺麗にみえるというわけではないけれど、世界が美しくみえる時には、何か良いことがあると思う。
目的の海岸通り沿いに着くと、運転席と助手席を交代する。コンビニエンスストアでおむすびやサンドウィッチを買う。飲み物も買う。あまりお金がないから、コンビニでいいかと彼女に聞いた。もちろん、彼女は何か思うところがあったのかもしれなかったけれど、「先輩、今、お金がないんですもんね」と言う。
車の中で昼食を食べ終えると、彼女は俺の車に初心者マークを張り、運転席で、よし、と気合いを入れる。
「そんなに力むことはないよ。運転っていうのは、すごく自然な行為なんだ」と俺は言う。
彼女は言う。「先輩はわかっていないんですよ。できる人っていうのはできない人のことをわからないんです」
俺はそうかな、と思う。「でも、リラックスするってことは、とても運転するにあたっては大事なことだよ。本当に、少しは音楽でも聴くってことが大事なんだ」
そう言うと彼女は深く息をはく。少しオーバーなくらいに息を吸う。
「右に行けばいいですか。左に行けばいいですか?」
「そういうのは、自由でいいと思うんだけど」と俺は言う。
彼女は言う。「あー。やっぱり先輩はぜんぜんわかっていない。どっちに行けばいいかってこともわからないんです。教わった通りにしか動けないんです。先輩みたいに、自由には動けないんです」
「わかった。わかった。じゃ、まずブレーキを踏んで、シフトレバーをドライブに入れて、ゆっくりアクセルを踏むんだ」
彼女は、そんなことはわかっていますよ、と小声で言う。俺はその声を無視する。車は、ちゃんとコンビニエンスストアを出て、右に曲がり、二車線の左側に入る。ちょっと右寄りになったり、左寄りになったりする。そのたびに、俺は注意する。
「ずっと真ん中を走ることが大事なんだ。左に寄り過ぎたりすると、原付バイクが通れなかったりするし」
ユキは言う。「そういうこともわかっているんです。けれど、どうしてもゆらゆら、ゆらゆらしちゃうんです」
そう言うと、彼女は右に大きく車体を揺らせてしまう。危ないと思って、俺はハンドルを助手席から動かす。そして、小刻みにハンドルを調整する。
「車は、常にハンドルを調整して、車体の位置を真ん中に保つ必要があるんだ。車は常に少し右にいったり、左にいったりする。地面も平らじゃないし、その影響を受ける。そういう時には、その都度、反応する必要がある。自分自身の位置を保ち続ける必要がある。慣れるまで、そういう調整を意識的に行う。するとそういうことが、いつの間にか無意識にできるようになる。何度も、何度も、繰り返しその感覚を叩きこむんだ」
俺は、そういうことを言う。いつの間にか無意識にできるようになる。自分で言いながら、そういうことは教壇に立っていて、わかっていなかったなと思う。いつも子どもたちが何か自分について話していないかびくびくしていた。学校の先輩は、子どもになめられるなと話していたっけ。けれど、理想の教育は、心と心が通じ合うことだとずっと思っていた。心をこめて話せば、何かが伝わる。そう思っていた。けれど、そういうことは思ったより簡単ではなかった。自分が何か教えることができる、特別な人間だとは思わなくなった。
「先輩、この道。ずっとまっすぐでいいんですか?」
彼女は怯えたように言う。
「わざわざ遠くまできたのは、この道がずっとまっすぐで、あまり車通りがないからだよ。特に指示がない限りは、まっすぐでいい。あまり心配せずに、車を走らせることを心地いいと思えるように走るんだ」
そう俺は言う。
「けれど、後ろから車がびゅんびゅん迫ってきて、追い越していくんです。そういう車が来るたびに、とても怖い思いがします」
「もちろん、車がまったくこないなんてことはないよ。車があまり走っていない道は、絶好の走り屋たちのドライブコースでもあるから、時々は怖い思いもする。けれど、彼らは俺たちより、ずっと運転がうまくて、こっちの呼吸なんかもわかっている。時々は若い連中が絡んでくるようなこともあるけれど、やり過ごせばいい。こっちがムキになってスピードを出したり、逆に怯えたりすることを彼らは楽しむんだ。自分は自分だという、そういうひとつの確信みたいなものをしっかりとつかまえておくんだ」
俺はそういうことを無意識に言う。自分が自分であることの確信? そんなもの、今の俺にはない。
ずっと道を走っていると、彼女は少し俺の車に慣れたのか、リラックスしている。車の運転も、ずっとましになった。
「ずっと、車を運転することが夢だったんです。父や兄にばっかり乗せてもらって、けれどその助手席の心地良さから抜け出したくて。自分で運転すると、どんな気がするだろう。そういうことをよく思いました。どこへでも行ける。自由に駆け回れる。そういうふうに夢みていました」
そう彼女は言う。俺は頷く。
「でも、実際はそうじゃなかった。ガソリンを入れずにどこまでも走れる車がないのと同じように。今までみたいに、誰かに気をつかって、ドライブしてても気をつかって、道ですれ違うと挨拶をして」
俺は仕方ないよと言う。「だって、俺たちが無茶をするわけにはいかない。どこまでもスピードを出してしまうような、そういう馬鹿をするわけにもいけない。誰もいない道というのはないし、どこかでは、その不自由さを我慢しなきゃいけない」
そういうと、彼女は寂しそうな顔をする。
「けれど、父や兄たちは、とても楽しそうに車を運転していますよ? 先輩だって、とても楽しそうに車を運転しています。私だって、そういうふうに車を運転したい。大草原を駆け回るってわけにはいかないでしょうけれど、自由になりたいと思っているんです」
俺は頷く。もちろんだと思う。
「その為には、身につけなきゃいけないことがある。他の車との細かい呼吸のやりとりや、どこをどう進めばどこへ繋がっているのかという地図や、方向感覚のようなものもいる」
彼女は言う。「そういうのって、才能なんですかね?」
俺は、彼女に向ってバカという。「誰だって、最初から何かができるわけじゃない。その最初の一歩を踏み出し、ちょっとずつ危険度を増すその繋がりの中を、走りはじめるんだ。まずは知っている場所で、信頼できる人と、充分に経験を積む。そのために俺が今、そばにいるんじゃないか」
そう言うと、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべて、へへっと笑う。
「私、先輩と出会えたことって、とても幸運だったと思っているんですよ。困った時に助けてくれる人なんて、そういないですから」
「俺だって、いっぱい助けられているんだよ。ひとりだけではまったくわからないことってあるから」
だんだん陽が沈み、周囲の車たちが、そのヘッドライトを点灯させはじめる。彼女は、そういう周囲の気配に合わせて、車のライトを点灯させる。ずっとまっすぐ走っていると、帰れなくなるから、そろそろUターンしようと俺は言う。行くところまで走ったし、そろそろ戻らなければ、帰ることができなくなる。
「何か、もう帰りはじめなければならないということが、少し寂しく思います」と彼女は言う。
彼女の言っていることはわかる。どんな休日にも終わりがあり、どんな祭りにも終わりがある。俺のこの仕事のない生活も、そろそろ終わりかなと思う。ちゃんと仕事をしないと、誰も本当に救うことができない。
「先輩はまた、どこか学校で教壇に立つのがいいと思うんです」
ふいにユキが言う。暗くなった帰り道で、そっと道を教えてくれるように。
「今日みたいなドライブ。私はじめてだった。免許をとっても、とてもひとりでは運転できないと思っていたんです。町では、すぐに右折したり、左折したりしなきゃいけないし、子どもたちや、老人や、おじさんや、おばさんを、いつか轢き殺してしまうと想像すると、道を走ることができなかった。自由に走りたいと思っていたけれど、実際に車を走らせると、誰かを傷つけたり、損なってしまったり、失ってしまう。そういうことがとても怖かった。実際に想像することと、現実は違うけれど、そういう怖さって、私の内側にあって、誰かが、そのまま運転することを止めてくれている。そういう気がしていたから」
彼女はそう言うと、大きく息を吸い込み、大きく息を吐いた。そして言葉を続けた。
「でも、今日は違った。教習所の中を、その退屈な道を、ぐるぐるまわっているみたいに安心していられたんです。最初の一歩は、もう踏み出せたんだという気がします。そりゃ、運転することの難しさはいつも感じていなきゃいけないと思います。そして父や兄や、先輩みたいに、もっと楽に運転できるようになるまで、注意して、注意して、注意しなきゃいけないと思います。けれど、免許をとってはじめてなんですよ? こんなふうに車を運転することが楽しいと思えるなんて。そういうことを教えることができる人は、先輩だけのような気がします」
「楽しかったのなら、よかったよ。けれど、疲れただろ? そろそろ、運転を交代しようか?」
そう俺は言う。自分の人生の、その確かな確信のような部分になると、心が強ばる。誰かに何かを教えるよりも、教えられることのほうが難しいと感じる。
「先輩は逃げているんです。ちゃんと力があるんです。そして、子どもたちに人生が、世界が、楽しいと伝えることができる力もある。世間の息苦しさと戦う覚悟があるんです」
「俺には自信がないんだ。誰かに責任をもって教えるという自信が。そんなのないんだよ。そして適当になってしまう。何かを話したり、身振り手振りで教えたりすることのその本当の意味を、はき違えているんじゃないかという気がするんだ。自分がこうだと思っている真実は、多くの子どもたちにとって必要ではないことのようにも思う。少し余計なことだったりすると思う時もあるんだ」
彼女は言う。「そんなことないですよ」
「そうかな。俺はさんざんみてきたんだぜ。校長や教頭や保護者が、望んでいることが、子どもが優秀になり、成績が良く、早く走ることができる。そういう優劣の中で、優秀であるということだけを望んでいることが」
話しはじめると止まらなくなる。ずっと悩んでいたこと。心の中に淀んでいた思い。そういうものが溢れ出す。
「でも、教室の中には、優秀じゃない子だっているんだよ。そして、その優秀じゃない子どもだって、確かにその内側に力を宿している。そういうことをさんざん感じてきた。そりゃ、世界を鮮やかに表現するものもいれば、そうできないものもいる。言葉をひとつとってもそうさ。そこには、教師としては数値化して、その順番を決め、できないものより、できたもの褒めなければならない。生まれつき、間違ってしまうものがいても、それを認めなければならない。けれど、誰にだって希望を持つ資格はあると思うんだ。けれど、そういうふうにこの社会はできていない」
そう言いきってしまって、何かを間違えたと思う。言い過ぎたと思う。どこかで、学校というものの、社会というものの、その可能性を自分自身で妨げているという気がした。もっともしてはならない、悪口を言っているような気がする。
車中では、ずっと沈黙が続いていた。音楽は流れているし、歌はとても陽気に流れている。けれど、今の俺たちの雰囲気には合っていない。
信号待ちで隣に並んだスポーツカーには、若者たちが乗っていて、今日いちにちをまだまだ楽しむんだという熱気が伝わってくる。その開け放たれた窓から流れてくる音楽はとても陽気で、人生はとても楽しげだ。悩むだけバカみたいな気すらしてくる。
別の信号では、若い男と女が、その信号待ちの瞬間でも、キスをしている。そこにはむせかえるばかりの何かがある。
ショッピングモール沿いでは、大勢の買い物客が、その大きな買い物袋を手にもって歩いている。とても幸せそうで、とても楽しそうだ。その買い物袋の中には、人生の幸福がある。
ユキもそういうひとりひとりを目で追っていて、俺に何か語りかける言葉を探しているみたいだ。けれど、彼女も言葉を失ってしまう。俺も手にすることができた言葉を失っている。心は時にはすべて開け放してしまうべきではないと思い知らされる。特に、こんな日曜日の夜には。
「明日から、また仕事があると思うととてもうんざりします。私は教職には就けなかったから、余計にそう思うのかもしれませんけれど、先輩ってとても恵まれているんですよ。そりゃ、今からすぐに教職へ復帰するなんてことはとても難しいのかもしれない。人生を生きる最初に持っていた希望みたいなものを失ってしまったら、もう一度、道に戻るということは簡単じゃないのかもしれない。けれど、そういうのって他人にはわかるんです。この人は、まだ死んでいない。ちゃんと時機を待っていて、自由に車を走らせるように、私なんかには想像もできないくらいうまくやれちゃうってことが」
俺は少し泣きそうになる。そんなわけないじゃないかと思う。車を運転することと、実際に教壇に立って人に教えることは違う。もし、俺に才能がいくらかはあったとしても、そんな思いはすぐに消えてしまう世の中の恐ろしさがある。もっとうまくやれる。もっと心が強い。そういう人が中にはいて、自分なんか、ただなんとか生きているだけだと思う。
「励ましはありがたいけれど」
そう俺は言う。それ以上、言葉にできない。
彼女は言う。「明日は、仕事があるので、今日は帰りますけれど、こういう夜には、いつか、ムードがあるデートをお願いしますね」
そして照れたように笑う。
「弱っているあなたを励ませることは、人として生きている喜びなんです」
俺は、彼女を車で家まで送り届けると、ずっと今日いちにちのことを考えている。彼女がそっと与えてくれて、残していった宿題を、ずっと何度も繰り返し考えている。車の運転は、無意識にしている。それでも事故はおこさない。そういう自信がある。どれだけ深く悩んでいても、間違わない。そういうふうに道を走ることができている。
できるだけ、次に彼女に会う時はマシになっていよう。それだけを決意する。まだまだ夜道は暗く、その中でひとり走っているだけなのかもしれない。もう真っ暗になった世界の中で、高速道路のオレンジライトに照らされているだけなのかもしれない。けれど、道はきっとどこかには続いていて、ただ走り続ければ、やがてどこかへと辿りつくのだから。