短編音楽小説#62 DÉ DÉ MOUSE, SKYTOPIA, Sincere – watch me
はるか遠くに輝いていた月や太陽が消えて星々だけになる時、僕もどこかで輝いていればいいと思う。眠れない夜に誰かが思い出すように。
自分が憧れてきたぶん、憧れられたい。ストーン・ローゼスの1st アルバムの冒頭に”I wana be adored”という曲があって、大学時代によく聴いていた。
“僕は憧れられたいんだ”
そう繰り返す歌が妙に心に迫ったのだ。憧れられたい。ひょっとするとそれは心に秘められた願いなのかもしれない。
フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」の最後で、ギャツビーが懸命に努力してきたのは愛する人と一緒になるためだったことがわかる。その願いは叶わないのだけれど、その努力に心震わせられる。でも、僕自身はどうだろうか?
3歳の頃、歌番組の真似をして歌を歌っていた。そしてそれを録音していた。ひょっとすると文字を覚える前から歌が好きだったのかもしれない。
でも実際にバンドで演奏するようになると、人前で演奏することにプレッシャーを感じるようになった。3歳の子どもは怖がらない。ただ愛されたいのだ。
僕は小説を書き、そして時々、曲を作る。何かを生み出せたら。そういう気持ちがある。
それはI wana be adoredということなのかもしれない。
誰かに憧れられる。憧れてきたぶん。
でも、そんなことはないのかもしれない。そして憧れられるということが、もしも叶ったとしてもそれは心地よいものではないのかもしれない。
誰かに褒められたいのではない。
それは憧れられるのとは違う。
もっと自分よりも年齢が下の若い人々から、疎まれるのではなく、憧れられたい。
何か心を動かす物語を書きたいと思う時には、自分がかつて憧れてきたように、憧れられたいと思う。
そして彼や彼女が本を読んだり、音楽を聴いてくれたらと思うのだ。
そういう思いを抱き続ける限り、人生は緊張感があるものになる。
それはどこかで誰かに笑われるような人生を歩みたくないということだと思うから。
そして音楽や小説をちゃんと届けられる人になりたいと今でも思う。