短編音楽小説#57 Dragon Ash「陽はまたのぼりくりかえす」acoustic cover
長い時の流れの中にいて、目を閉じれば思い出せることがあった。でも記憶は不確かで少しずつ忘れていくことがある。だから忘れないように、文章を書き始めた。毎日、何かを綴り記録することで、安心できることが増えた。ただ毎日はいたずらにすぎていくのではなく、言葉にすれば日々、何かの形で変化を続ける河のようなものだと認識できたからだ。そして日々はただ通りすぎていくだけではなく、記憶の中と言葉のなかに蓄積され、読み返すたびに思い出せることが増える。言葉はトリガーとして過ぎていく日々を思い出させてくれるのだ。
10数年ぶりに友だちに会った。10数年というのは大きな時の流れだ。時間はあっという間に過ぎたように思える。でも記憶の中では、あの時話した言葉の意味を思い出し、考え、そして彼や彼女という存在の確かさに思い至るのだ。それは他者を理解することがうまくできない私にとって、必要な時間だった。時の流れははやすぎて、私は人を理解することが難しいのだ。
魂はどこにあるのか? 言葉はどこから生まれるのか? 私は自然に言葉が生まれるけれど、なぜそういう言葉を言っているのか、あまり考えたことはない。それほど賢くないのだ。
昼間、ここのところ特別寒かったが、今日はふと暖かだった。それは何かのメッセージみたいだった。慌ただしく毎日が過ぎていくから、思い出はとても大切だ。暖かかったから散歩をして近所の神社にお参りした。
10数年という時間がすぎて、みんなどうしているだろうか?と思う。変わったこと。変わらなかったことがある。
心の中には、いつも友だちたちと過ごした時間があって、実際に会うとどんな感じかと思う。
記憶の中にいる彼や彼女たちと、そして自分自身と。いったい大きな時の流れの中で何かが変わっただろうか?
暗い夜は何度も明け、陽はまたのぼる。