短編音楽小説#49 Fejká – Shades of You
真夜中に夢をみる。あなたの影と僕の影だけがいつまでもダンスを踊っている。実際には身体を触れあわせていないのに。夢だけが僕とあなたの出会う場所。影だけの交わり。
あなたは笑っていただろうか? それとも泣いていただろうか?
ただ美しく踊っていた。そしてあなたは言うのだ。いつか時が過ぎたら、真昼の世界で会いましょう。公園に行き、芝生に寝転んで、サンドウィッチを作っていくから。
僕はそして彼女の影と別れた。
昼間の世界は辛い世界だった。それはビジネスの世界だった。労働の、上下関係の、あらゆるしがらみの世界だった。僕は作り笑顔で人々と接し、家に帰って缶ビールを飲んだ。
あなた。
あなたがいないことが、こんなにも僕を滅入らせる。あの夜の世界はどこへ消えてしまったのだろう?
でも、あなたは約束してくれた。いつか、昼の世界で出会うのだ。僕はあなたの影しか知らない。でも、いつか僕はあなたがやってきて、そして笑ってくれることを夢みていた。
そしてあなたがやってきた。あなたが若い日々に求めていたのは、僕ではなかったかもしれないし、僕が求めていたのもあなたではなかったかもしれない。それはただ影だったから。
でも昼の世界では、現実のあなたと触れ合える。秋がやってきて、冬になっても、また巡る季節をともにできる。
夜、眠る時にあなたは僕の影を抱きしめてくれる。ただの影だったものたちは、現実の世界に着地し、そして懐かしむようにあの夜を思いかえすのだ。
夜の世界では誰もが孤独だった。誰かが誰かを呼んでいる。その声を聴きわけ、やがて昼光の世界にあらわれるあなたと恋に落ちる。
通り過ぎた者たちは、すべてあの夜の世界では、今も星々のように繋がっている。