短編音楽小説#48 4hero – Les Fleur
深淵とも思える暗闇が広がり、その中で音楽は唯一の灯りとして輝いていた。その向こう側、音の先には何かを伝え世界を変えようとするアーティストの存在が感じられた。しかし、その脆弱な灯火が本当に世界を変えることが可能なのか、疑念は頭を離れなかった。
闇夜は延々と続き、音楽は唯一の世界との繋がりだった。やがて私は深夜のクラブへと足を運び、音楽への信仰心を深めていった。暗闇の中では、音楽に心を委ね、体を震わせ、踊るだけが全てだった。そしてそこには、無言の共感、人と人との見えない繋がりが存在した。
それは、言葉を交わすことなく、互いを認識しあうことだった。この闇色の世界では、周囲に何者かが存在するという認識だけだった。そしてその闇の中では、君は君でなく、私は私でない。私は君であり、君は私となる。それは混沌と一体化した感覚だった。
夜明けまで踊り続ける。音楽に自己を投影し、イマジネーションや言葉が内側から溢れ出てくる。そして、自分が誰かとの出会いを求めていることを理解する。
時間は流れ、しかし、踊り続けていると、世界が変わることを信じられるようになる。そして、花が永遠に咲き続けることを悟る。葉が開き、花が咲き誇る。時を越えて届くメッセージだ。
朝が訪れ、この世界の美しさが目に焼きつく。これまでの人生の尊さが心に沁み入る。ずっと闇夜と思い込んでいた世界には、星々が輝き、その静寂こそが夜明けを迎えるまでのひとときだったと理解する。
そして君と出会う。ようやく世界は動き始める。音楽が花と化し、愛と喜び、信仰と希望を咲かせる。その花は孤独な人々への贈り物として生まれる。全ての人間の内にその花の種があり、自己の内部に目を向けることで、美しさと力を見つけることができる。闇夜を越えて鐘を鳴らし、喜びの祈りで空を染め上げる。恐怖を取り払い、新たな時代の訪れに心を解放する。それが音楽を灯火に、闇夜を彩る人生の芸術だ。