短編音楽小説#17 GoGo Penguin : ONE PERCENT
「たった1%しか可能性がないんだ」
友人はそう言った。1%? 僕はその可能性について考えた。
1%しかない可能性。ほぼ無理だということだ。でも、誰がその可能性を計算したのだろう。
「わからないな。1%っていうのは0ではない」
僕はそう言った。「ゼロだと言うことも誰が決めることなんだ?」
あらゆる夢は諦めなければゼロではない。たった1%だったとしても可能性がある限り、夢を実現させることができる。そして確率とは日々、変動するものだ。
「僕はやってみるよ。諦めることのほうが簡単だ。僕は少しずつ状況が良くなっていることを知っている。少しずつ世界が変わっていっていることを知っている。諦めることは簡単だ。僕は何度か諦めたことがある。けれど後で後悔したんだ。あの時、なぜ続けなかったのかと。諦めなければ、少しずつ成長すれば、道標があれば、僕はどこかに行けたはずなんだ。だから僕は諦めない」
僕は静かにでも少し興奮してそう言った。
「少しはそういう気持ちもわかるんだけどな」そう友人は言った。
「でも、お金を手にいれる方法なんて、いくらでも他にあるんだ。そして世界の役に立つ方法もな」
そう友人は言った。
でも、僕は言った。
「自分が何者かになれると信じて行動する人間と、何かを諦めてしまい何もせずにいることのどちらが素晴らしいと思う?」
僕は尋ねた。僕は相手に少し揺さぶりをかけることに成功したと思った。友人は少しうろたえたようだった。
「僕は知っている。どんな世界も最初は可能性なんてなかったんだ。でも、可能性があったから、少しずつ広がっていった。未来なんてないと思うことは簡単だよ」
友人は少しうろたえたようだった。そもそも本当にこの人は僕の友人なのだろうか?
僕はそう思いはじめていた。
「かつて夢をみていたことがあるのか?」
僕はそう訊いてみた。
友人は頷いた。
「でも、俺はその夢を追い続けるには代償が必要だと思ったんだ」
友人はそう言った。
「代償なんて大げさなものはいらないよ。信じるだけでいい。そして信じていれば少しずつ道は開けるものさ」僕はそう言った。
立場は完全に逆転していた。でも友人は「俺には何ができるのかわからない」と言った。
「何でもいいんだよ。失ってきたものを少しずつ取り戻せばいい」
僕は彼にそう言った。彼はその言葉の後で少し泣いた。
GoGo Penguinの音楽に触れた時、僕はそのアンサンブルに完璧に嫉妬し、そしてそこにある3人の素晴らしい音楽に憧れた。トリオというものはジャズでは定番のように思えるが、ジャズとしてはいささか飛び抜けたオリジナリティがその楽曲にはあった。呼吸まで聴こえてきそうな演奏。そこにはかつて僕が音楽を演奏していた頃、夢みていた奇跡のようなアンサンブルがある。
男と女がいれば、そこには愛という奇跡が生まれる。けれど人間が3人以上になったら? 僕はそこに音楽の美しさがあると思う。愛というものは決してふたりだけのものではないのだ。
美しい音楽が響いている。その音楽のタイトルはone percentだ。でも、その1%に奇跡のような美しさを感じる。