短編音楽小説#43 Petit Biscuit – You
僕が孤独だった時、君が現れて僕は一人ではないと教えてくれた。
いつだって、誰かが手をさしのべてくれた。僕はある時には間違って、差し伸べられた手のことを忘れてしまったけれど、君の手のことは忘れない。
冷たい夜が忍び寄ろうとしている。でも心の中には多くの人と繋いだ手の記憶があって、そして現実に君の手が僕の手と重なっている。
過ぎ去っていく多くのものごと。僕は昔、クラブのイベントのフライヤーで重なった手の写真をデザインしたものを見た。重なった手は美しく思えた。
重なった手。それは多くのことを意味している。
実際に君と手を繋いだ時、心が繋がった気がした。
重なった手。その距離にあなたがいる。
もしすべてがフィクションになって、君だけが僕のリアルになったら。
もしすべてが画面の向こう側の世界になって、君だけが僕の現実になったら。
世界にふたりぼっちになってしまうとしても気にしない。けれど、君は違う。
君の向こう側に、世界がみえる。
僕は君を通して美しい世界に触れる。
どんどん正直になっていく。君さえいればそれでいい、そんな僕の閉ざされた心と、君へ開かれた心。
僕の心の中の残りはすべて言葉になり、世界に広がっていくから。
世界には多くの孤独な人々がいて、君を求めている。
たとえ世界に傷つけられて、もうどうにもならなくても。
多くの傷ついた人々は、誰も傷つけないあなたを待ち望んでいる。