短編音楽小説#16 [Coldplay : A Sky Full Of Stars]
真っ暗な闇の中にあなたはいる。今までどう歩いてきたかわからないしこれからどう歩いていけばいいかわからない。
道はどうやらふたつに分かれていて、どちらかの道を選ばなければならないと感じている。
もうひとつの道を選ばなかったことを後悔しないか。しばらく、分かれ道で途方にくれる。
ひとつの道は華やかで人が大勢通った後があり、賑やかな声まで聞こえてきそう。
もうひとつの道の先には険しい山が立ちはだかっていて、とても寂しそう。でも、はるか遠くまで世界をみることができるかもしれない。
どちらの道を歩けばいいか、あなたは考える。
けれど思う。
本当に、道はふたつしかないのだろうか?
道は誰かが歩いたことがあるから作られる。どんなに整えられた道も、どれだけ草木に阻まれていても、目の前に道があるなら、それは誰かがいつか歩いた道だ。
誰かが歩いてきた道をやみくもに歩いてきたのかもしれないし、誰かが歩いてきた道をまた歩くのかもしれない。
でも、あなたは道を選ぶことをやめる。
ここから先は、自分が道を作るだろう。この道とあの道を繋ぐ架け橋となるだろう。でも、その時には次に歩く者の為に、松明を灯そう。石段を敷き詰め、歩く者のことを思い、一歩、一歩、新しい道を作っていこう。そう決意する。
そして道のない道を歩こうとしたその時、今まで歩いてきたすべての道が、誰かが、今、あなたの為に、これから歩く者の為にその身を捧げてきた道だということを知る。誰かが、尊さを持ち、何もないところへ、道を築きあげてきたのだと。
そしてたとえどんな道を歩こうともどんな道を切り開こうとも、すべての道が繋がり、闇夜でも星が降る光によって、誰もが心細くなく、歩くことができる道が、これまでにもあったし、これからもあることを知る。
何もない道を歩いていたとしても、歌を歌えば誰かがよりそってくれるかもしれない。それは、いつか大勢の人が歩く道になるだろう。
哀しい時に聴く歌や、たったひとりだと思っている夜に思いかえす歌もある。リズムの繰り返しに身体を揺らせることも。でも、いつか辿り着く人生の賛歌は、今、これから響くのだ。