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短編音楽小説#40 Bill Evans:Waltz for Debby(take2)

 音楽という神秘的なものに出会ったとき、僕は恋に落ちた。最初の音が鳴り響くと、心は激しく揺さぶられた。それまで自分が生きてきた意味は、この瞬間のためだったのかもしれない。彼女と目が合う。その瞳の奥には隠されたメッセージが宿っているように思えた。唇が静かに動く。僕と彼女の間には少し距離があったが、その音楽はすべてを伝えていた。

 簡単に説明すれば、僕は彼女の客であり、彼女はピアノを演奏していた。黒髪の女性だ。演奏が続いている間、彼女を以前どこかで見たことがあるかもしれないと思った。でも思い出せなかった。彼女は心の奥深くにいて、僕を待っていたかのかもしれない。

 ピアノの音は止むことなく響き渡っていた。その指先に見とれた。優雅で美しい。神様が与えた才能。彼女はすべてを持っているような気がした。僕は再び彼女と目が合う瞬間を切望した。

 もし心がそのまま音楽になるなら、ピアノの演奏は美しい心をあらわしている。もし音楽が人の心を顕わにするなら、彼女の心が僕に届いていた。
 その瞬間、僕は彼女に心を奪われた。

 人はそれぞれ美しい。たくさんの女性たちがいるけれど、彼女だけはまるで僕のために咲いた花のように思えた。僕のために生まれ、そして僕のために演奏してくれている。

 愛がそこにある。そう思わせるほど、彼女の演奏は美しかった。

 彼女ともう一度、目があう。
 今度こそ間違いなく伝わってくる。
 僕も彼女のために生まれてきたのだ。


 ピアノの演奏は続き、夢のなかでは僕たちは夜空を踊っている。星々は輝き、またたく。
 永遠がもしあるなら、ずっとあなたの音楽を聴いていたい。
 何かを伝えたかった。でも僕は魅了されていて、その心の動きを追いかけることしかできない。
 僕は願い続けた。
 美しい世界があった。すべての人に役割があり、世界が繰り返し、昼と夜を行き来した。
 彼女は僕がそのピアノの音を忘れないように演奏してくれた。
 僕は自分がまだ希望に溢れていた頃を思い出した。
 
 
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 ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」を初めて聴いた頃に妻と結婚した。音楽との出会いも、小説との出会いもすべて運命なのかもしれない。この曲を聴くたびに、人生が輝いていた頃を思い出す。時は螺旋のように繰り返すものだろうか? もしただ年老いていくだけだとしても、ビル・エヴァンスの演奏を聴くことができる。そしてあの人生の幸福を思い出せる。

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