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短編音楽小説#8[Music for a Large Ensemble:Steve Reich]

人は波の音を音楽として表現することもある。あの海の波の音のことだ。

19世紀の海辺の町では、神について演奏する代わりに、海について演奏するピアニストがいたし、もっと大昔には、人々は海辺で陽が昇るその雄大さとともに音に合わせて踊り、祝った。

そういう意味ではきっと自分以外の何者かに向けた広い意味での”祈り”のような演奏が大昔、音楽と分け隔てることができないものだったように思う。

時は移り変わって現代。
人々は、異性を対象に愛を歌うように語らい、あるいは、日々の屈折した思いを酒とともに音楽でまぎらわせた。そういうふうに音楽は、日常的な行為へと変わった。あるいは、それも大昔から、変わらぬことなのかもしれないけれど。

ある少年が、何かのきっかけで音楽に触れた時、彼は自分も、そういうふうに音を奏でるものになることを欲した。選んだ楽器は、ギターだったり、サックスだったり、ピアノだったり。多くの少年が、それぞれに惹きつけられた楽器を手にしたことだろう。

ともかく、そういうふうに自分の楽器を手にした時から、音楽とともにある彼の人生は始まったし、その少年が、何をみつけ、何を見出したかは私にはわからない。

遠く、海の向こうを隔てた場所まで辿り着いた者もいれば、聴衆に囲まれるコンサートホールへと辿り着いたものもいるだろう。あるいは、多くの友人を手にした者も。

たとえば、スティーブ・ライヒという音楽家が見つけた音楽は、電子の海の波の音だったのかもしれない。そういうふうに感じることがある。

誰かが見つけた新しいことや、どこかで起きた悲しい出来事や多くのことが、ネットワークを通じて、地球の裏側まで広がっていく。そういう波の音だ。

さざ波であったり、激しいうねりだったり、広がり続ける波紋。

そういう音を耳にする時、私もかつて、人々がそうしたように踊り、祈る。

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