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真夏の森

夏の日差しを浴びながら原付で故郷をはしりまわる。

8月の太陽の日差しは強く、森と田畑の緑が美しい。風が通り過ぎ、子ども時代に町の隅々まで自転車で走りまわった日々を思い出す。

車で移動していたら気づかないような風景。かけめぐる風。そして汗がながれる暑さ。原動機付自転車はスピードはでないけれど町を身体で感じながら移動するにはちょうど良い。

昔、原付を自由に乗り回すほかの学校の高校生が羨ましかった。僕の通う高校は原付免許の取得を禁止していて、乗ることはできなかった。

今では車の免許も持っているし、何百キロも離れた場所まで旅をすることもある。車を運転すると、とても遠くまで行くことができる。それは素晴らしい体験だ。でも原付に乗って走ると、タイムマシンに乗っているみたいに昔のことを思い出すことができる。

もうずっと会っていない友だちの家の側を通り過ぎる。彼や彼女は今、何をしているだろう。

30年以上前、森の中に入り、野山と一体になって遊んでいた。自然に抱かれているように土にまみれた。

今では森のいくつかは、切り開かれ道路になり、家屋になった。僕の故郷は田舎だからまだまだ緑が残っている。30年以上経過してずいぶん変わったのはむしろ僕のほうだ。

地球温暖化のせいで年々、気温は上昇を続けているらしい。真夏の太陽を恐れず走りまわっていた頃を思い出すと、今の自分は夏をエアコンの効いた部屋で過ごす観葉植物みたいだ。

あっという間に過ぎてしまった30年間。でも変わらずに森は美しく太陽の輝きの中にある。

ずっと昔、真夏の森で笑っていただろう。故郷が美しく感じられるのは、きっとあの頃のせいだ。

高校生の頃は遠くへ行きたいと思っていた。そしてその後で実際に遠くへ行った。

故郷を遠く離れた世界も悪いことばかりではない。

でも今、願うことはここに居続けることだ。美しい森があるこの場所に。