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偶像を捨てた日

アイドルが嫌いだ。

美しい歌を女性たちが踊って、歌って、とても楽しそうなのに好きではない。

もちろんアイドルが好きな人もいるだろうし、人生の応援歌を彼女たちが歌っていることは否定しない。

彼女たちの歌に励まされて生きている人もいるだろう。

それでもアイドルが嫌いと言ってしまうのには深いわけがある。

まだ小学校のころ、アイドルが好きだった。ちょうど読んでいた漫画がアニメ化されて、主題歌をアイドルが歌っていた。

まだカセットテープがあった時代で、CDやMDはもう少し後で登場する。

テレビで流れているそのアニメの歌をカセットテープに録音して、繰り返し聴く。そういう時代だった。音楽は昔から好きだった。

僕としては、そのままアイドルが好きで、彼女たちが歌う幸せな世界観に浸っていてもよかった。自分の中にそういうごく普通の人間性があったことは間違いない。

でもある時に、女の子と話をしていて、「そんな音楽を聴くなんてバカじゃないの?」と言われた。正確にそう言われたわけじゃないけれど、確かそういう意味のことを言われた。

どんな子だったかは覚えていない。なんとなくそんなに可愛い子ではなかったような気がする。

でもその子が語っていることは、凄くよくわかった。雷にうたれたみたいによくわかった。

僕も女の子がアイドルなんかを聴いていたら、なんとなく嫌な気持ちになる。

圧倒的なルックス。

そう。アイドルというものは、凄く見かけのものだったりする。

だから、僕や彼女のように、どこにでもいる普通の顔の普通の少年や少女は、自分がこうだったらいいという、その願望のようなものを知らず知らずに魅力的に感じてしまうのだ。自分は自分であるにも関わらず。

もちろん、アイドルのようなルックスの人に憧れたり、恋い焦がれることを否定しない。もしそういう人と結ばれたら、もう少し自分のことを肯定できるかもしれない。生まれてくる子どもも、とても可愛いかもしれない。そういう無意識の何かが、子どもの中にもあるのだろう。

でも僕は名前も覚えていないその女の子の言葉で人生が変わった。

アイドルのようなものは聴かなくなり、自然と別のものを求めた。

ここから先は長い話になる。ルックスや見かけではなく、別の何か。

少なくともそれは簡単には見つからなかったし、今でも見つかったかどうかわからない。

でも、8歳か9歳か、それくらいの年齢の何気ないクラスメイトのひと言が人生を大きく揺さぶることになった。

人は見かけによらない。あるいはそうかもしれない。でも見かけ以外の何が大切なんだろう? その答えを探して、文章を書いているのかもしれない。

鏡をみて思うことは、もうちょっと髭をそれよということだ。あとはなんでもない普通の人間。それが僕だ。

自分のルックスに対して気にすることはほとんどない。

気にしていることは、人生でどんなことを書けたか。そしてどんなふうに届けることができたか。そういうことだけだ。

子どもの頃に何気なく交わした言葉たち。そういうものを思い出しながら。