短編音楽小説#75 The Smashing Pumpkins – 1979 (Freedom Fry Cover)
子どもたちはいつだって悪ふざけをする。これは遠い昔の話だ。先生のことを馬鹿にして、大人に反抗するのが日常だった。授業中にこっそり漫画を読み、MDを回し聴きして、誰かのウォークマンが壊れたときはみんなで嘲笑った。真夜中までゲームに夢中になり、次の日の授業では、眠る。授業中の静けさの中、コカ・コーラがこっそり開けられる。
放課後には、コンビニの前に座り込んで、夜風に吹かれながら無駄話を続ける。誰かが誰かと付き合ったという噂が絶えず飛び交い、その真偽を確かめるために無駄に時間を費やす。借りたCDやカセットが擦り切れるまで繰り返し聴き、共有した音楽が、みんなの心をつなぐ。深夜には、免許取りたての友だちが家から車を持ち出して、誰もいない道を駆ける。車の中で鳴り響く音楽は、自由だ。
ライブハウスでは、何も考えずに暴れる。汗が飛び散り、怒りや不安が音楽の中にある。夜が深まると、みんなで海に向かって車を走らせ、浜辺で波の音を聞きながら、誰かがふざけて海に飛び込む。誰が一番バカなことをしたかで笑い合う。酒を飲んで記憶を失い、次の日には何を話していたのかも思い出せない。
夕方まで眠り続け、また夜になるとパーティが始まる。悪口が飛び交い、秘密が暴露され、そして笑いが響く。コンピュータをハッキングして、違法なソフトで遊ぶ。時にはどちらが強いか競いあう。学校に行くのが嫌になって、数日間休んで、誰にも理由を説明しない。何もない映画を観て泣く。物語の続きを求めて、本屋をさまよい歩く。
自転車で転んで、膝をすりむいた。最初のキスは、不器用でぎこちなく、何もわからないままだった。誰かが大人のふりをしてタバコを吸う。単車や車を改造する。自分だけの世界を作りたい。どこか、遠くへ行きたい。しかし遠くへ行けば行くほど、自分の居場所が見つからない。何も決まっていない旅にでかける。
好きな子にいたずら電話をかけて、どうでもいい話をする。何かに追い立てられるような日々、どうしようもなく消えてしまいたいと思う時。誰もが一度は感じる、その胸の奥底にある得体の知れない感情。
海がみたい。そう思った瞬間、何かが変わるような気がした。夜中の浜辺で、ただ波の音を聞いていたい。潮風が髪を撫で、星空が広がる。その無限の広がりの中で、すべてが一瞬止まったかのように感じる。誰かとずっと話し続けていたい。時間が止まればいいと思った。
やがて、夜が明ける。