短編音楽小説#73 長谷川白紙-外
自分のコンピュータの中に引き篭もった。すべての会話は文章で行われ、僕は自由になったと思った。仕事が終わると自転車に乗ってドラッグストアに行った。僕の1日の外出はそれだけで、僕は内側に閉じこもった。僕がその時下した選択は、外と関わらないというものだった。
エアコンの室温を常に25度に保ち、同じ服装をして、一日二度風呂にはいり、毎日、パソコンに向かった。
ディスコミュニケーション。そして僕は音楽を聴き続けた。部屋自体が巨大な僕の内側となり、ディスプレイの中に世界があった。いつか世界はすべてディスプレイに映される。僕はそう信じた。
画面の向こうの文字には、女性がいて、僕に仕事を与える。僕はその文字を読んでキーボードをうち、仕事をする。それが100年後にコンタクトレンズ型のコンピュータをつけて仕事をすることに繋がると僕は思った。
この世界に外部は必要ない。
そう思った。
なぜ僕がそういった極端な考えにたどり着いたのか?
それは多くの不登校児に尋ねてみればわかるだろう。何か外へ出ることができなくなったのだ。
そして音楽は羊膜のように僕を包み続けた。
そして僕はタイプを続けた。
春・夏・秋・冬。そしてまた春。
1年間、部屋に閉じこもると、外へ出たくなった。
外はどんな色をしているだろう?
本当の人間に戻りたいと思った。
僕の行動は100年後の未来に繋がっているのではなく、ただ自分に繋がっているだけだった。
外。
自分の外。
世界の外。
そこには醜いものだけではなくて、美しいものも、きっとあるだろうと時間が経過した今は思える。
そして僕は外に出た。