短編音楽小説#69 circle/ハイスイノナサ
世の中にはとてもかなわないと思うものがいくつかあって、時に眺めることしかできない/聴くことしかできない。自分の想像力の及ばない世界を描く人がいて、それは世界の突端だと思う。
音楽は感情の表現だと思う。僕が生み出す音楽は時にシンプルすぎる。でもハイスイノナサの音楽を聴いた時、なんて美しく激しく複雑なのだろうと思った。世界の果てから響いているような音の連なり。人間的で機械的な音楽。感情が表現されているようで、隠されている。
短い時間にあらゆるものがこめられている。その集合体としての曲に圧倒される。短い時間の中に脳の隅々まで染みわたる音楽のアイデアがある。
歴史の中に、確かに刻んでいる音楽があると思う。それは時間に名前を切り刻み、離れない。今日、僕は悲しい気持ちだったけれど、ハイスイノナサの音楽をみつけた。今日はそれだけがあった日のように思えるけれど、名前のない一日に彩りを与える音楽だった。
時に自分の小ささに驚く。この音楽と比べれば、僕はなんでもない人間だ。そういうないことと、あることが響く。