甘いものに目がない。
昔はそれほど好きだったわけではない。でも社会人になってから、仕事の合間に糖分を求めるようになった。甘い飲み物も好きだけれど、最近はとくにお菓子があると、「よし、いっちょがんばるか」と思えてしまう。
カフェ好きの習慣は、京都で大学生活を送っていた頃から始まった。アップルのデザイナーが経営しているというカフェの噂を友人から聞いて、時間が空けばふらりと立ち寄っては、本を読んだり店員さんと他愛ない話をしたり。そんな日々の積み重ねが、今でも僕の生活の一部になっている。
当時は、音楽も服もカフェも、メジャーよりマイナー、新品より古着、チェーンより個人経営、という価値観が自分の中にあった。
そんな僕でも、結婚してからはスターバックスに行くことが増えた。妻の影響で訪れるうち、フラペチーノの魅力に抗えなくなった。甘くて、冷たくて、美味しい。気づけば、プラペチーノにミルクプリンを追加して注文するようになっていた。完全に中毒である。
それでもやっぱり、心のどこかでは、個人経営のカフェのほうに惹かれている。大手チェーンもいい。でも、まるでインディーズ音楽のように、店主の感性がしっかり表れた料理やデザートに出会えるお店には、特別な価値があると思うのだ。
今日、久しぶりに近所のカフェに立ち寄ると、メニューが新しくなっていた。「スコーン・アフォガード」なる未知の逸品が追加されている。
アフォガードとは、バニラアイスに熱いエスプレッソをかけて食べる、あのデザート。冷たいものと熱いもの、甘さと苦味が口の中で溶け合う。僕の好物のひとつだ。
スターバックスにもアフォガード・フラペチーノという名品があるけれど、個人経営のアフォガードはやっぱり格別だ。そこにスコーンが添えられるなんて──。
いったいどんな味がするのか? 気がつけば、頼んでいた。
甘いものを食べると、なぜだか仕事がしたくなる。けれど今日は、仕事がない。だから、代わりにこんなエッセイを書いている。
メジャーなお店も、昔よりはるかに美味しくなって、多くの人に愛されている。それはそれで素晴らしいことだ。でも、たまたま出会ったカフェで、大手にはないオリジナルな逸品に巡りあえる瞬間は、密やかな喜びだ。
自分の感覚を信じて歩いていたら、美味しいものに出会えた。そんな日には、狩猟民族のように、ちょっとだけ誇らしくなってしまう。
今日のスコーン・アフォガードは、文句なしに美味だった。またあの小さなカフェに通うことになるだろう。
人生には苦味がある。でも、時には甘いものも必要だ。
そして願わくば、いつもこんなふうにカフェに寄り道して、良い気分でいられたらと思う。